その壁を破ったのが、弘前大学医学部の故高垣啓一教授だ。高垣教授は、鮭の鼻軟骨を薄切りして酢漬けにして作る青森の郷土料理「氷頭なます」に着目し、酢酸抽出により鮭の鼻軟骨からプロテオグリカンを効率的に抽出する方法を確立した。
この酢酸抽出法によるプロテオグリカン量産化の道が開けたことで、弘前大学のプロテオグリカン研究も一気にすすむことになる。青森の地元企業、角弘との共同研究により、サケ鼻軟骨から高純度かつ大量にプロテオグリカンを精製する技術が確立された。水産加工品の製造工程においてサケ頭部は廃棄されることが多かったが、活用の道が開けたことで資源の有効利用の観点からも、その製造法は高く評価されている。
▲角弘プロテオグリカン研究所で鮭の鼻軟骨からの抽出処理が行われている
弘前大学の研究が進むにつれて、先述した様々なプロテオグリカンの機能が次第に明らかになった。そうした研究成果をもとに青森県、弘前市との連携が進み、地域資源として産学官連携の支援が行われるようになった。そうした産学連携の成果として、プロテオグリカンの市場創生に大きなきっかけとなったのが、原料メーカー一丸ファルコスとの連携だ。一丸ファルコスは、健康食品、化粧品のメーカー等に幅広いネットワークを持ち、弘前大学や青森県が支援している素材としての信頼感もあり、健康・美容素材として数多くの企業で採用が進んだ。地域発の健康素材として最も成功した産学官連携プロジェクトとして、2011年には農林水産大臣賞2013年には文部科学大臣賞を受賞した。
また、2017年には一丸ファルコスが出品したプロテオグリカンが米国最大の原料・素材展示会「ナチュラルプロダクツEXPO」において、最新の優れた機能性原料に贈られる「最優秀新成分賞」を受賞し、世界中からも注目を集めている。
▲一丸ファルコスは米国の展示会で「最優秀新成分賞」を受賞