プロテオグリカン・ビジネスフォーラム パネルディスカッション
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ビジネス|プロテオグリカン・ビジネスフォーラム パネルディスカッション

プロテオグリカン・ビジネスフォーラム
パネルディスカッション

2019年12月3日
@イイノホール&カンファレンスセンター(東京・内幸町)

<パネラー参加者>

・サントリーウエルネス 取締役専務執行役員 柴田浩志 氏
・ダイドードリンコ ヘルスケア事業部 企画開発グループ リーダー 原田清佑 氏
・ あおもりPGブランド推進協議会会長
・ カネショウ 代表取締役社長 櫛引利貞 氏
・マキュレ 代表取締役 高橋裕孝 氏
・ラビプレ 代表取締役 三浦和英 氏
・ あおもりPG アドバイザリーボード委員 林志津子 氏
・一丸ファルコス 開発部リーダー 伊藤賢一

<モデレーター>

・日経BP総研メディカルヘルスラボ所長 藤井省吾氏

パネルディスカッションでは、P G(プロテオグリカン)商品を製造するナショナルブランドメーカーからサントリーウエルネス、ダイドードリンコ、また、地元青森からはカネショウ、ラビプレ、マキュレ、そしてPG素材原料を供給する一丸ファルコスが参加。超高齢化社会に向けて、 予防やセルフケアの重要性が高まる中で、筋力維持やロコモ対策、たるみ対策、炎症抑制といったエイジング課題の解決に有望な素材として、PGの可能性や優位性が議論された。

論点①:プロテオグリカン(PG)のポテンシャルについて

藤井:PGは、導入初期には、美肌効果を持つ化粧品、そして次に膝関節を中心としたサプリメントとしての利用が着実に拡大しています。機能性素材として、美容、健康の両面の効果を持ち、将来的には医薬品としての可能性も見えてくるなど、とてもユニークなポジションを確立しつつあると思います。多くの健康素材、サプリメントなどを扱っているナショナルブランドメーカーの立場から、PGの可能性をどのように見ていますか。先ず、サントリーさんからお考えをお聞かせいただけますか。


▲モデレーター:日経BP総研メディカルヘルスラボ所長 藤井氏

柴田:サントリーウエルネスでは、美容ドリンク「リフタージュ」を中心にPGを配合していますが、本日のアカデミアの先生方の発表などもお聞きして、あらためてPGは、今後の健康・美容市場をリードするような大型の素材になるということを実感させられました。健康食品メーカーの責任として、PGに対する市場の盛り上がりを一過性のブームに終わらせることなく、じっくりと育てていきたいと思います。

さて、PGの可能性ですが、その一番のポイントは効果が体感できることです。体感をベースに着実に市場を広げているPGの成長を見ていると当社の主力商品であるセサミンの成長プロセスにとても良く似ているという感想を持ちました。

セサミンも市場導入時には、PGと同様に、市場の客様に対する認知は全くなかったことから認知・理解を広げることに多くの努力を要しました。しかし、PGの場合は、青森県、三村知事をはじめ地元の皆さんの支援のもとで、着実に認知を広げ、市場を開拓されてきました。今では健康・美容、そして腸内環境にも効果があるなどマルチな機能性をもつ優れた素材であることもわかってきました。こうした可能性を我々のお客様にどのようにしっかりと伝えていくのかが、メーカーとしての課題だと考えています。


▲サントリーウエルネス 柴田氏

原田:ダイドードリンコでは、膝関節のケアをコンセプトにした、主力商品である「ロコモプロ」にPGを配合しています。人生100年時代を迎え、エイジングケアに対応した素材が求められています。今後は、病気になる前の予防やセルフケアの重要性に対する認識が高まり、超高齢化社会の日本で新たな健康文化が培われていくのではないかと考えています。PGはそうした時代の中心に位置づけられる素材ではないでしょうか。というのもPGはごく少量で多様な機能をもち、生活習慣病やロコモ対策など加齢に伴って生じてくる様々な問題に根本的に対応してくれる可能性がある素材だと考えるからです。


▲ダイドードリンコ 原田氏

藤井:日経ヘルスの取材や編集を通じて、様々な健康・美容素材をこれまでに見てきました。その中でその素材が大きく成長するかどうかは、消費者のリピート率が重要な指標になるのではないかと考えています。

PGを使った商品のリピート率はどうでしょうか。

高橋:当社(マキュレ)は、地元でPGを配合した青汁を製品化して通販チャンネルを通じて販売しています。この商品のリピート率は、90%に達しています。通常、通販の商品は、3ヵ月継続するとそこで一段落するものなのですが、PGの商品については違いますね。購入者の方がたぶん体感をもたれているからだと思います。


▲マキュレ 高橋氏

少量で体感が得られリピート率が高い

三浦:当社(ラビプレ)は、PGを配合した化粧品ラインを商品化して、通販チャンネルを通じて販売していますが、高橋さんが述べられたようにリピート率は大変高く、購入された方の半数以上はリピートしていただいています。

櫛引:カネショウでは、PGを配合した、飲むリンゴ酢「女神の林檎酢」を商品化しています。この商品は、健康食品ではなく、嗜好品として販売しているので、リピート率をそんなに意識してはいないのですが、通販チャンネルに限っていうと、やはり購入された方の半数近くはリピートしていいただいているのではないでしょうか。

原田:当社でも、リピート率の高さを実感しています。詳しい数字は申し上げられませんが、リピート率の高さは、通販チャネルで販売している健康食品の場合、最も重要なポイントです。さらに付け加えれば、PGの場合、他の素材に比べ少量でその効果が実感できるというのがポイントだと思います。

藤井:皆さん、ありがとうございます。実際にPGを配合されて販売されている事業者の皆さんのご発言から、PGは、少量でも効果が体感できる素材だということを確認できたと思います。

さて、健康・美容分野の商品を育成していく上でもう一つ重要なポイントになるのがブランドストーリーです。あおもりPGブランド推進協議会の会長のお立場から櫛引さんにPGのブランドストーリーについてご説明いただけますか


▲カネショウ 櫛引氏

あおもりPGマークの信頼感

櫛引:青森では地元で獲れる鮭の鼻軟骨を酢漬けにした「氷頭なます」という郷土料理があります。この「氷頭なます」からヒントを得て、弘前大学の故高垣教授が、PGの酢酸抽出法というのを開発され、それまで1gあたり3000万円ともいわれた高額な稀少素材であったPGの量産化の道を開かれました。

青森の人たちは「氷頭なます」を食することを通じて、自然とプロテオグリカンを摂取していたということになるわけで、青森に美人が多いといわれることの要因ではないかと密かに考えています(笑)

原田:当社の「ロコモプロ」のパッケージには、あおもりPGの認定マークを大きく表示させていただいています。弘前大学を中心に積み重ねられてきたこれまでの研究成果、三村知事のリーダーシップのもとで青森県もバックアップされていること、また、地元企業の皆さんもこの素材を盛り立てていこうという姿勢が、このマークに集約され、オーソライズされたメッセージになっていると考えているからです。このマークの存在により当社の製品に対する信頼性も高まると期待しています。

藤井:林さんは、外資系化粧品会社の薬事担当として長く活躍され、あおもりPGのアドバイザリー委員として、主に地域コスメの開発支援を行っておられます。その立場からPGのブランドストーリーにとって必要なことは何でしょうか?

:櫛引さんがおっしゃるように、東北の女性は肌がきれいです。そうした観点から地域の化粧品として訴求していくことも大切ですね。実際にPGを配合した地域コスメも最近、続々と生まれてきています。

ただし、PGを化粧品の分野で更に花開かせていくためには、市場を牽引するような強いメッセージを持ったスター商品が必要です。

例えば、美肌の分野では、シワやたるみ改善が大きなテーマとなっています。PGは、この面でもエビデンスをもっているので、こうした分野で大型の商品を開発していくことが必要だと思います。


▲PGアドバイザリーボード委員 林氏

論点②青森発、世界を目指す健康美容素材として

藤井:PGは、最近では日本だけでなく、海外市場や日本に来られるインバンド市場でも関心が高まっていると聞いていますが・・・

三浦:そうですね、PGは既に国内では文部大臣賞や農林水産大臣賞など数々の表彰実績がありますが、一昨年、世界最大の米国・健康・美容素材展示会「ナチュラルプロダクツEXPO」で一昨年に最優秀賞「Best New Ingredient(新しい成分)」を受賞しました。それを受けて、当社にも海外のバイヤーから商品や事業連携の引き合いがきています。


▲ラビピプレ 三浦氏

伊藤:米国市場では、「Juvecol(ジュベコール)」というブランド名で原料提供を始めています。近年、コラーゲンなども含め、日本の健康・美容素材に対する海外からの関心が急速に高まっていると感じています。

アジア市場での展開も拡大しています。それぞれの国ごとに独自の健康・美容成分に対する規制があり、色々苦労もありますが、最近では、タイでPGが認可されるというニュースがありました。タイは東南アジア市場での戦略拠点になる場所なので、大変期待しています。シンガポールからは、ハラル対応について、要望がきています。鮭が原材料であり、素材自体としてはもちろん対応可能なので、今後、ハラル対応についても進めていきたいと思います。

コラーゲン、グルコサミンといった他の素材は、グラムオーダーでの摂取が必要ですが、PGは、10mg単位、大変少量で効果が体感できる点が高く評価されているようです。


▲一丸ファルコス 伊藤

台湾を足がかりにアジア、インバウンド市場にも

櫛引:青森はもともとリンゴの輸出などを通じて、台湾との関係が深かったことから、

東北の中でも数多くの中華系、東南アジアの方々に来ていただけるようになっています。台湾から直行便も飛んでいます。こうした方々にぜひPGの体験をしていただき、ファンになってもらい、国に帰ってからも継続的なユーザーになってほしいという期待を持っています。

外から来ていただくのを待っているだけでなく、こちらからも積極的に海外に出ています。青森県の支援も受けて、昨年、台湾でPGのプロモーションを展開しました。キレイになりたい、健康になりたいという願望は、海外の方も一緒です。そうしたニーズに応えられるPGの将来に対して大きな手ごたえを感じています。

論点③産官学連携の可能性、今後に期待するもの

藤井:プロテオグリカンは、弘前大学の研究シーズを起点とし、文科省、青森県の支援を受けながら、それに民間事業会社が参加するという、正に産官学連携の中で成長してきました。PGを日本発の世界に誇れる素材として更に成長させていくために今後の課題は何でしょうか。

三浦:当社は弘前大学発のベンチャーとしてPGの化粧品事業をスタートさせました。

もともとプロテオグリカンの開発には、青森県の産業クラスター構想というものが起点にあったわけですが、地域産業としての実績は、弊社の事業も含めて、まだまだこれからというのが実態です。更に地域に貢献できる企業になることを目指して、頑張っていきたいと思います。

柴田:メーカーの立場でPGの産官学連携を考えた場合に、こうした連携の中から極めて高品質な素材が誕生してきたということを先ず評価したいと思います。健康・美容産業にとって、原料の信頼性、安全性というものが最も重要な前提です。弘前大学を中心とした基礎研究、その知見をベースに角弘、一丸ファルコスさんの連携で、今後ともグローバルな評価に耐えうる高純度、高品質な原料を供給していただけることを何よりも期待しています。

伊藤:現在一丸ファルコス、角弘では、国内外の11の研究機関と共同研究などを実施しています。その研究分野も食品から臨床研究まで非常に多岐にわたっています。その中でも弘前大学との連携は最も重要と考えています。プロジェクトの立ち上がりの時期には、若干研究の足並みが揃わない場面もありましたが、現在では、中根先生を中心に様々な専門分野の先生方と連携できる体制ができあがっており、新たな研究成果が生まれつつあります。弊社としては、今後ともこうした良好な関係を継続していくことを切望しています。

高橋:地元企業としてPGを全国にどんどん売り込んでいきたい。最近では、青汁だけでなく、PG配合の化粧品も発売しました。今後もPG関連の商品を数多く開発していきたいと考えています。というのもPG関連の商品を一人でも多くの方に知っていただくことが、青森という地域の価値を知っていただくことにつながるからです。

三浦:当社も、地元企業としてPG化粧品の事業に注力していきます。PGは弘前大学発の素材として、産官学連携が正にワンチームとして機能することを通じて成長してきました。当社は弘前大学発のベンチャー企業として、産官学連携による恩恵を最も受けられる立場にあるわけで、当社自体もこうしたチームワークを更に強化・連携させることを通じて成長していきたいと考えています。

:PGを美容の分野で発展させていくためには、実力派のスター商品の登場が必要ということを申し上げました。その観点からいくつか要望を申し上げると、美容の分野では、高齢化社会の下で、シワ、タルミ改善が脚光を浴びています。こうした面での研究を産学連携のチャレンジとして弘前大学・青森県と連携して行っていけないでしょうか。また、商品のブランディングとも関連しますが「医薬部外品」の許可・承認をぜひ取得してほしいと思います。既に許可申請は出されているとのことですが、引き続き取得に向けてご尽力いただきたい。

原田:これまでは弘前大学の研究シーズを起点にプロダクトアウト型の事業を描いてきましたが、今後は、企業が更にコミットして、顧客ニーズ側からアプローチしていくことが重要になると思います。大変いい素材なので、一過性のブームで終わらせることなく、この素材をしっかり育てていくことがメーカーの責任だと思っています。

櫛引:青森PGは、たくさんの方々の努力により産官学連携体制が構築され、それが 青森県の主導の下で、うまく機能してきました。こうした流れを今後とも続けていくことが不可欠です。しかし今後はそのありかたを民間主導に変えていくことも必要です。本日のフォーラムが民間主導で開催されたことは、その第一歩といえるでしょう。

青森PGが事業的にも成功しつつあることから、今後さまざまなプロテオグリカンが市場に出てくることが予想されます。そうした競争環境の下で、青森PGが先行し、トップの位置を保ち続けなければなりません。

そのためには、弘前大学の先生方との連携のもとで更なるエビデンスの取得、青森PGの存在価値を更に高めるような研究をしていただき、それを民間企業が活用していくという流れを確かなものにしていく必要があると思います。

藤井:(全体総括)

皆さん、本日は貴重なお話をありがとうございました。

本日のフォーラムでは、青森県、三村知事の青森PGに関する熱いプレゼンテーションに始まり、アカデミアの先生方からPGに関する最先端の研究成果について紹介があり、PGの未来の可能性についても知ることができました。

また、後半のパネルディスカッションでは、PGのビジネスに取り組んでいるナショナルブランドメーカー、地元企業の皆さんにご参加いただき、あらためて、PGが現代の市場ニーズに合致した優れた素材であること、それぞれのお立場で着実にビジネスを発展させていることが明らかになったと思います。

本日のフォーラム全体を通して、PGは、今後の超高齢化社会の中にあって、大変重要な素材になると私自身も実感することができました。本日ご参加いただいた皆様には、この素材とあらためて向き合っていただき、超高齢化社会を迎えた日本の社会課題の解決に共に取り組んでいただけたらと思います。

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