野澤:数多くの地域で農水産物から機能性素材を抽出し、地元の大学等で研究が進められたが、プロテオグリカンのような成長軌道に乗ったケースは残念ながら極めて少ないのが現実です。そこで、地域におけるイノベーションの連鎖がどのようにして成立したのかということを検証し、他のプロジェクトに活かしたいという問題意識に立って、青森県のプロテオグリカン、それと香川県の希少糖のプロジェクトについて調査することになりました。その結果、わかった重要なポイントは、イノベーションの価値連鎖が県内だけで完結していなかったことです。
青森県・弘前地域は、産業基盤・科学技術基盤とも決して恵まれたとはいえないところでしたが、地域の伝統を活かし、大学で長年研究されていた分野の成果から生み出された素材に着目し、その素材の実用化に関係者の意識や活動が集中したことが功を奏しました。本事業で鮭の頭を処理してプロテオグリカン原料の量産化に取り組んだ角弘は、地元の有力企業ですが、機能性素材の製造分野は全くの門外漢でした。にもかかわらず地域のためになるならと投資を決めたことは英断でした。そして、その後、実用化が比較的スムーズに進められたのは、県外企業の一丸ファルコスとの連携が成立したからです。
県外企業との連携が実用化を後押し
一丸ファルコスは岐阜県に本社がある素材メーカーですが、化粧品分野や健康食品分野で数多くのナショナルブランド、グローバル企業の取引先を抱えています。当社が介在することでユーザー企業の高い要求仕様にも応えて素材の提供を進めることができました。その過程でユーザー企業に対しては、プロテオグリカンが青森県や弘前大学がコミットしている素材であるということも採用するにあたって大きなバックアップになったと思います。