奇跡のトリプターゼ抽出成功が新たな製品開発を導いた
肥満細胞から放出される酵素トリプターゼに眼をつけ、今まで誰もできなかったその抽出に成功しました。抽出した酵素を使い、それがどのように肌に影響を及ぼしているかを突き止めたのが当研究です。さらにはその働きを抑制する物質としてヒメフウロエキスを発見しました。
苛酷な作業現場で困難であったトリプターゼの抽出に成功
肥満細胞から放出され、炎症を引き起こす原因と見られる酵素トリプターゼがどのような機構でトラブルを引き起こしているのかを追求することが、このプロジェクトの目的でした。そもそも、長年の間、同様の動きで肌の炎症を引き起こすのはヒスタミンだと言われ、研究が進められてきましたが、近年発見されたトリプターゼが実はヒスタミンの10倍も存在し、しかも、紫外線を浴びた皮膚でトリプターゼが強く発現していることがわかり、注目を集めていたのです。
肌において、このトリプターゼがどのような働きをしているかを研究するために、まず必要だったのが、トリプターゼを入手すること。しかし、これは販売されておらず、自力で細胞から抽出しなければならないことがわかりました。
ある大手製薬会社の研究員2人が、とある医学部の協力を得て、ヒトの細胞からトリプターゼの大量抽出に挑戦したものの、1年かけても失敗し続けたといいます。不安な気持ちで、しかも、低温での抽出が必要だったため、厚着をして大きな冷蔵庫の中で作業。結果、なんと2週間でトリプターゼを手に入れることができ、実際のメカニズムを研究することができるようになりました。
トリプターゼが基底膜を破壊、光老化を促進していることを実証
日常的に物質の抽出・精製を行っている経験が功を奏したのでしょうか、トリプターゼ抽出に成功したアルナシリは、早速皮膚の細胞に対してトリプターゼがどのような影響を及ぼしているかを研究しました。
結果としてわかったことは、トリプターゼは真皮マトリックス、細胞外マトリックスの分解を促進し、光老化を導くと考えられました。また、表皮基底膜が破壊され、表皮と真皮の剥離が起こることも突き止めました。
トリプターゼを抑制するのはヒメフウロ
トリプターゼが肌の炎症だけでなく、光老化に関わっていることを実証したアルナシリは、その後数百種類の原料をスクリーニングし、トリプターゼを阻害する作用を持つ成分を探しました。
そこで発見されたのがヒメフウロのエキス。これが肌にダメージを与えるトリプターゼの働きを抑える力を発揮することがわかったのです。