プロテオグリカン研究の今
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ストーリー|プロテオグリカン研究の今

プロテオグリカン研究の今

一丸ファルコス 高橋研究員

プロテオグリカンは、美肌作用を中心とした美容分野、関節への働きを中心とした健康分野の両面の機能性を持つ、アンチエイジング美容・健康素材として研究が進められている。プロテオグリカンの研究の現状について一丸ファルコス高橋達治研究員に聞いた。

問:美容面ではプロテオグリカンの美肌作用の研究が進みました。
コラーゲン、ヒアルロン酸に次ぐ第三の美容素材ともいわれるようになりましたが、プロテオグリカンはこうした素材に比べて、どんな特色があるのでしょうか。

高橋:プロテオグリカンは、タンパク質にコンドロイチン硫酸などの糖鎖がいくつも繋がったもので並んだ多糖の間に水を抱え込む構造を持っていることから、保水性に富み、肌や軟骨の弾力性を保つ働きをしています。高い保水性能は保湿を中心とした化粧品素材として適しており、保湿成分として多くの化粧品に配合されるようになってきました。

更にプロテオグリカンには、保湿機能に加え、加齢や紫外線などの影響で働きが低下すると知られている線維芽細胞を活性化させる働きがあることがわかってきました。

問:線維芽細胞をどのように活性化しているのでしょうか

高橋:プロテオグリカンの構造内には上皮細胞の生成や修復を促進するEGF(Epidermal Growth Factor)と似た部分があり、これが肌細胞の活性化に寄与しているのではと考えています。

わたしたちの研究では、ヒトの経口摂取において肌の、たるみ改善、シワ改善や、細胞試験ではヒアルロン酸やⅠ型コラーゲンを産生促進させるなど、美肌の分野で幅広い効果が認められています。

問:もう一つプロテオグリカンに期待される作用が関節への働きです。ヒアルロン酸やグルコサミンなどと同様に関節対策のサプリメントの成分として数多く採用され、2017年以降は、機能性表示食品としても発売され、利用者の多くが体感を得ているようですが、こうした効果の作用機序はどのように考えられているのでしょう。

高橋:千葉大学大学院医学研究院の渡辺敦也特任教授に協力いただいて、MRI(時期共鳴撮像)を用いた関節軟骨の質的評価に関するヒト試験研究を行っています。その結果、関節に不快感のある中高齢者がプロテオグリカンを1日10mg、6カ月継続して経口摂取した結果、関節軟骨部分でのプロテオグリカンが増加していることが確認されています。現在、渡辺先生の評価手法を用いてベトナムで更に規模の大きい臨床研究を実施しており、近々、その成果も報告できる予定です。

この他にも 私たちが行った臨床研究(ヒト試験)で、軟骨代謝の改善作用、軟骨分解抑制作用、関節痛の緩和など様々な効果が認められています。

もちろん、飲んだプロテオグリカンがそのまま膝関節まで届いて、直接軟骨になったわけではなく、何らかの作用で軟骨の分解と再生の代謝サイクルが改善したのではないかと推測しています。

問:効果は認められるが、まだ、その詳しい作用機序については、まだわかっていないということですね。

高橋:そういうことになります。ただし、この点についてはいくつか仮説も提出されています。プロテオグリカンの研究を長年にわたり牽引してきた弘前大学特任教授、中根明夫先生は、プロテオグリカンがもたらす抗炎症作用に着目されています。中根特任教授らの研究で、プロテオグリカンの摂取が、腸内の炎症を誘発する免疫細胞を減少させる一方で、過剰な炎症を抑える制御性T細胞という免疫細胞を増加させる働きがあることがわかってきました。体の中で発生している炎症を抑えることにより関節の軟骨での炎症も抑制され、それが痛みの軽減や軟骨の状態を改善することに繋がっているのではないかと考えられるのです。

プロテオグリカンの体への吸収についても新たな知見が生まれています。プロテオグリカンは大きな分子量を持っているため、腸管から体内に吸収されることは難しいと考えらえてきましたが、東北女子大学との共同研究当社でラット腸管を用いて試験をおこなったところ、プロテオグリカンが腸管から吸収されることが確認されました。

その吸収メカニズムを研究したところ、腸管での吸収の一部は、クラスリン依存性エンドサイトーシスという過程を介して取り込まれていることが分かりました。これは、細胞が細胞外の物質を囲い込むような形で細胞内に吸収していく過程のことを言いますが、大きな分子量のものでも腸から取り込むことができることを示しています。プロテオグリカンの腸管吸収の可能性も見えてきたという点で大変興味深い成果です。

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